ロシア記事:偉大なる羽生は、新たな振付でロックシンガーに。2度のオリンピック王者のフレッシュなプログラムを解説

2021年1月20日水曜日

2020/21 羽生結弦

t f B! P L

全日本選手権での羽生結弦の演技に関する昨年末のロシア記事、仕掛ってやめていたのですが最後まで訳しました。遅くなりましたが紹介します。

記者の個人的な意見ということで、「アレ?」と思っても流してください。



1/29発売 KISS & CRY 氷上の美しき勇者たち 全日本選手権2020総力特集号〜Road to GOLD!!! (表紙・巻頭特集/羽生結弦選手)

偉大なる羽生は、新たな振付でロックシンガーに。2度のオリンピック王者のフレッシュなプログラムを解説

https://sport24.ru/news/figureskating/2020-12-28-yudzuru-khanyu-korotkaya-programma-video-yudzuru-khanyu-proizvolnaya-programma-analitika-razbor-postanovka

2020/12/29 / Sport24 / アリョーナ・ヴォルコワ



羽生結弦は、現代のフィギュアスケートにおいてプログラムの選択に真剣に配慮している数少ない選手の一人である。単に人気があるからといって、なにかよくある曲を滑ることは彼にはできない。羽生は自分の音楽を見つけるまで、「セイメイ」を滑り直すだろう。それは「彼自身の」プログラムだからだ。そのため、新しい振付での新シーズンというニュースは、多くのファンは期待で立ちすくまざるを得なかった。


最初に出てきたのは、結弦にショート・プログラムを振り付けたジェフリー・バトルからの情報だった。ジェフリーは、Cafeccito con Mashaテレビ局のインタビューで、新しいプログラムはショパンのショートとは雰囲気が違うと暗示しただけだった。


時期尚早な曲の流出の経験がすでにある羽生は、直前練習に至るまで曲名を秘密にしていた。結果として、その後ファンたちがロビー・ウィリアムスの「Let Me Entertain You」だと認識できたのは観客席に入ってからであった。さあ、10ヶ月待った甲斐はあったのか。


疑いなく、その甲斐はあった。プログラム自体の話に移る前に、事実を何点か指摘しておく必要がある。ロックダウンの最初から羽生は一人で練習していて、大会ににもコーチは同席しなかった。両プログラムはオンラインで振付がなされたが、私たちはそういった形での振付で成功したものも、あまり成功していない例も見てきた。


羽生のショート・プログラムを見たら、それがそんな状況下で振り付けられたものとはまったく思えないだろう。このフィギュアスケーターは、自身の得意な役柄についてのステレオタイプすべてを完全に破壊している。彼は力強い叙情詩しか滑れないと思っていたのでは? そこにロックである。それだけでなく、完全に考え抜かれた、ご機嫌なロックだ。結弦は一番最初から観客の注意を自分に惹きつけ、最初のポーズとそれに続く振付はあまりリラックスしているものだから、これが作り込まれた振付には見えない。音楽のアクセントであるベースは極めて単純であり、ある意味天才的である。着氷を音に嵌めるためには、何回トリプルアクセルを練習すればよいのだろうか? その前10秒以内にはまた別の音を強調しているが、それはイーグルでだ。ルールや必須エレメンツがたくさんあるステップシークエンスも、理想的な形で音楽に溶け込んでいる。スピンをしながら腕でドラムパートを表現するのは、誰にでもできることではない。このプログラムは本当の歓喜を呼び起こし、望めばセロトニンのレベルも上げてくれるだろう。



フリー・プログラムも興味深い点が多い。例えば、ファンたちは練習時にかかった音楽を当てようとしたが、音楽認識のShazamアプリも役には立たなかった。



羽生は、誰も知らない人気のない曲を選ぶ愛好家である。あの「セイメイ」や、2016/17シーズンのフリー「Hope and Legacy」を思い出してほしい。結果として、名前とは全く関係のない、まったく異なった曲の断片から構成されていた。


今シーズンもより明確なものとはならず、「Heaven and Earth(天と地と)」という名前は理解を複雑にするばかりだ。曲は実際に新しいものだが、まさに羽生のスタイルである。花模様のキモノの衣装は、宇宙から見た地球のスタイリッシュな表現を思い起こさせる。曲は時計じかけの音で非常に興味深い構成になっており、全体的な雰囲気は、伝統的な音階で、不穏だが壮大であると言える。言うまでもなく理解が難しいプログラムだ。というのも、羽生のプログラムにはシナリオというものがなく、彼にあるのはイメージだからだ。彼はそれをアクセント、ポーズ、腕の振り(それはさらに自由に動くキモノの袖で飾られる)で創り出している。まさに曲に嵌っている、ハイドロブレードや数々のステップ、イナバウアーで構成されたコレオシークエンスが、この振付が作り出す壮大な印象に至らせている。プログラムの始まりと同じようにプログラムが閉じられる。時計の音、両腕を空へと掲げ。



このプログラムには、過去2回のオリンピック・シアクルの総合を見て取れる。ここには、「セイメイ」との交差もあり、「Hope and Legacy」のスタイルにも似て、ステップシークエンスでは、あの比類のない「オトナル」をすぐに思い出した。そしてこれとは対照的に、大胆なショートプログラムはロックである。羽生結弦は、自分の演技の象徴性や内包する意味を軽視したことは一度もない。ステップの一つ一つ、動きの一つ一つにそれがある。


数日前、羽生は5回目の全日本選手権王者となった。こんな単純ではない時期に、彼は自身の健康をリスクに晒して全日本選手権に来て、「自分の演技で人の心を燃やして」くれた。


これが成功した、ということ以上に何が言えるだろうか?いまや世界選手権にすべての期待をかけるしかない。この氷上の芸術をみんなが見なくてはならないのだから。



(終わり)

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