ブライアン・オーサー・ロングインタビュー：メドヴェデワ、羽生、そしてトゥトベリゼの娘まで（５・完）メドヴェデワ／SNSについて

（エヴゲニヤ（メドヴェデワ）とは将来について話し合いますか？）

ええ、でもいまは一番単純な局面ではありません。彼女はリンクで練習していて、すべて計画通りです。しかし、彼女は少し気を落としているように思います。

というのも、いまは世界選手権に向けて練習している選手たちがいますが、彼女はその中に入っていません。彼女は素晴らしい選手ですからそれに値するのですが。彼女はロシア選手権でブーツが壊れてしまったという状況で、世界選手権には出られないのです。これは公平なことで、疑問は何もなく、文句を言う筋合いは有りません。そのときはブーツが失敗したというだけです。

モスクワでのグランプリ大会で彼女がどんな良いコンディションにあったかみなさんも見られたと思います。精神的にも、身体的にも。彼女の人生の中で最高の演技だったとも思います。私にとっては、その演技はオリンピックの演技よりも良かったです。女の子ではなく、女性が滑っていましたから。彼女は技術と感情、プログラムの見せ方、プレゼンテーションを一つにすることができました。それが彼女にとって新たな成長段階です。いま、彼女はちょっと停滞していて、難しい時期です。

私はいま、ジュニアとシニアの世界選手権に出る選手の指導に集中していて、彼女はなにか重要なイベントに合わせたものではない通常の練習をしています。こんな状況では自分にやる気を起こさせるのは難しいですが、彼女はファイターです。リンクに入って、他の選手たちと一緒に練習して、休むことはありません。

すでに来シーズンのプログラムの作成をはじめました。すでにシェイリーン・ボーンとのフリー振付の時期を指定しています（シルク・ド・ソレイユより）。ショートの音楽も選びました。振付は、間違っていなければジェフリー・バトルで、近く振付に取り掛かるか、もしかするともう始めているかもしれません。彼女は必要なステップをすべて行っており、多くのことを考えています。そう、彼女にとっては簡単なことではありません。このようなレベルの選手には、誇りと尊厳があります。大会に出ても以前のように勝てないのは辛いことですが、それがスポーツです。

想像してみてください。彼女の目の前でフィギュアスケートの時代が変わってしまったのです。たった2年くらいのことで、彼女の世代が戦っていたトリプルフリップやトリプルルッツからのコンビネーションという武器ではもう足りなくなってしまったのです。たった2シーズン前の重要武器は3－3のコンビネーションでしたが、いまはどれだけ多くのことが変わってしまったことでしょう。しかしいまは、その若いスターたち、新しい選手たちのうち誰かが、せめて少しの間でも天空に留まってくれる事が必要です。

彼女たちは素晴らしい選手です。もっとよく知るのに時間が必要です。彼女たちの成長を見たいと思います。習得した4回転という面だけではなく。彼女たちがどのようにプログラムを展開させていき、どんなふうに動きの練習をして、聴衆・観客に何を言いたいのかについてどのように取り組んでいくのか、関心があります。それは経験によってのみ得られるものです。歌手でも俳優でも、どんな分野かを問わず、自分が観客と何を共有するのかという何かを心に持つ必要があります。

（短期間でも、コメンテイターになることを提案されたことはありますか？）

実際、1994年オリンピックのコメントをしたんですよ、つまり100年くらい前ですね。正直に言うと、コメンテイターとしてはまあまあという感じでした。私は偏見なく、物事を自分の言いたいように呼び、選手すべてに良いところを探そうと努力しました。良い滑りと悪い滑りの区別は付きますが、いずれにせよ、理想的なものまでは私は届かないと感じました。単純に、自然に出てくる人もいれば、そうではない人もいる、ということです。

トレイシー・ウィルソンは素晴らしいコメンテイターになれるでしょう。コロラドや、例えばクラスノヤルスクのテレビの前に座っていながら、トレイシーのコメントから新しいことを知ることができるのです。なぜここで評価が下げられたのか、なぜこのエレメントは無効になったのかなど、観客と一緒にしゃべることが重要で、観客の上にいてはいけないのです。まったく同じことが、スコット・ハミルトンや、アメリカの伝説のコメンテイターであるディック・バトン、そしていまはテッド・バートンについて言えるでしょう。

ただ、想像してみてください。女子のショートは48選手が登場します。そのひとりひとりに言葉を探して、良いところを指摘して、うまくいかなかったことがあれば残念に感じなければならないのです。重要なのは、注意せずに言ってしまった意見によってインターネットで磔にされてしまうことです。いまのインスタグラムのようなSNSはすべて、様々な人に匿名で意見を述べる場所を提供しています。これはまた私の問題でもあります。あまりにも深く受け取ってしまうのです。

（インターネットでどのように振る舞うべきか、教え子たちに教えていますか？）

ええ、そのことについては多くのことを話しています。全部読む必要はない、ということを説明しようとしています。ショートが気に入らない人がいる？まあいいでしょう。それを読む必要性はありません。逆にショートは好きでも、フリーの音楽がそうではない人もいます。いったい何ができるのでしょうか？ですので、選手たちにはそういったものから身を覆うように助言しています。

私が選手として滑っていた頃はインターネットはありませんでした。その代わりマスコミがいました。カルガリー・オリンピックでの演技後の朝をいまだに覚えています。カナダの新聞は朝から「オーサーは素晴らしかったが、いずれにせよ負け犬だ」という見出しで報じていました。これにはただ心を引き裂かれました。そして同じようなことが、いまはSNSで起こっています。ただ、100倍ひどいものですが。

（選手のために教育セミナーのものを開催するのもよいのではないでしょうか？SNSとどのように付き合うかについて。）

近いうちにちょうどそういったセミナーを考えています。14歳のときにインターネットに投稿した愚かなものに、今後の人生すべてがかかってしまうかもしれないことを、誰かが選手に説明しなければなりません。いまやグーグルがすべて記録してますから、秘密はもうありません。

私たちは古い写真はガレージの靴箱の中にしまってあって、誰もたどり着くことはできませんが、今の子どもたちは生活すべてが人の目に晒されてます。彼らの方がかなり大変でしょう。