ザカリャン:世界のショー・マネージャーは全員、羽生結弦に祈っている(後)危機感と、羽生結弦の健康と繁栄

2019年10月30日水曜日

2019/20 ISUアワード コストナー ザカリャン サフチェンコ フェルナンデス ランビエール 羽生結弦 浅田真央

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今回のISUフィギュアスケート・アワードの発案者とされるスポーツ・エージェントのアリ・ザカリャンのインタビューがありましたので、2回に分けて紹介します。
今回は後編です。

ザカリャン:世界のショー・マネージャーは全員、羽生結弦に祈っている
(前)ISUアワードの経緯
(後)危機感と、羽生結弦の健康と繁栄 ←この記事




11/8発売 フィギュアスケートマガジン2019-2020 Vol.2 スケートカナダ特集号

アリ・ザカリャン:世界のショー・マネージャーは全員、羽生結弦に祈っている

エレーナ・ヴァイツェホフスカヤ / 2019/10/28 / R-Sport


続き

ディカプリオが獲得したオスカー像

(昨シーズンのアメリカの最優秀指導者のタイトルを、ジュニア13歳のアリサ・リューのコーチが受賞したことは、私にとって大きな驚きとなりました。)

それは、アメリカらしい経緯だと言えるでしょう。私は、賞が国際的なものになって欲しいのです。そして、絶対に透明なものに。シーズンを通して、誰が上がったか、誰が下がったかというのを見守ることのできる、なにかマラソンのようなものになります。「オスカー」の争いでレオナルド・ディカプリオが勝ったとき、セレモニーまでの半年前からすでに勝つか負けるか、獲れるのか獲れないのかという熱い議論が行われていたのを覚えています。こういったことすべてが、6ヶ月にわたり情報空間では喋り散らかされていました。結果としてディカプリオがオスカー像を獲得してからも、その勝利がさらに3ヶ月くらい議論されていました。


(まあ、それは映画の話では…。)

フィギュアスケートはどこが劣っているというのでしょうか?フィギュアスケートは独特なスポーツです。実際、どれだけフィギュアスケートが素晴らしいもののかを理解している人は多くありません。そして、価値にまったく見合っていない、非常に少ないお金しか稼げていないのです、本当に見合っていません!ですので、氷上の「オスカー」を創る主な考え方は、フィギュアスケートの評判を上げ、スポンサーからはるかにより強力な関心をフィギュアスケートに注入し、フィギュアスケーターやコーチ、この界隈にどんな形であれ関係しているすべての人たちが、自分たちのやっていることを誇りに思えるようにすることです。あと2年働いて、その後はフィギュアスケートをやめて家に引きこもるか小舟に乗って釣りをして過ごしたい、という風に考えているコーチをたくさん知っています。


(ジョン・ニックス(1953年世界選手権金メダリストで、ペギー・フレミング、クリスティ・ヤマグチ、サーシャ・コーエン、アシュリー・ワグナーの元コーチ)のことを言っておられるのでしょうか。)

彼だけではありません、多くの人がそう言っているのです。しかし、これは出口のなさからそう言っているのです。なぜなら、数十年をフィギュアスケートに捧げても、本当に忘れられてしまうからです。


(各賞はどのように決定されるのでしょうか。)

ジャーナリストも、フィギュアスケーターも、ファンも参加することができます。実際、投票がゴール直前まで達してから、6名の専門家からなる審判団が決定を採択します。その専門家は、グランプリシリーズを実施している6ヵ国、つまりフランス、中国、ロシア、カナダ、アメリカ、日本を代表する、かつての有名なアスリートです。名前は、申し訳ないですがまだ挙げることはできません。とはいえ、私が最初に提案したのはユーロビジョンで採用されているスキームで、ISUに加盟する各国が一票ずつ持つというものです。しかし、ここではもう私の意見は重要なものではありません。ISUはスイスの会社を起用して、今回スケートカナダ大会で発表する部分を策定しました。


ラスベガス・ストリップと借り物のジュエリーの競争

(レッドカーペットやオートクチュールの衣装、借り物の宝石…それがあなたの人生の夢なのでしょうか。)

いいえ、もちろんまったく違うものを夢見ています。これは、フィギュアスケートの人気を維持するための単なる一歩です。フィギュアスケートは、実際に失われつつあるスポーツなのです。このことについてはあなたともお話したことがありましたね。スペインでは、ハヴィエル・フェルナンデスの引退後はフィギュアスケートはなくなったと思ってください。カロリーナ・コストナーが去ったあとのイタリア、ステファン・ランビエール引退後のスイスと同様に。ドイツから目立ったフィギュアスケーターが現れるのはいつのことになるのかわかりません。アリョーナ・サフチェンコが引退したら、ドイツでもフィギュアスケートは衰えることになるでしょう。おかしく聞こえるかも知れませんが、とても危険な状況が日本で形成されつつあります。私はビジネスマンとして、羽生結弦に、最大限に長く滑り続けてほしいと強く思っています。


(あなたの考えを必ずしも理解できていないかもしれません。日本のフィギュアスケートは羽生一人だけにかかっているとでも主張なさるわけではないですよね?)

ただ例を挙げただけです。ユズルがグランプリ大会のためにロシアに来ると、私のデータではおよそ5000人の日本人ファンが彼のあとを追って日本からやってきます。ただ、この数字でさえある程度抑えられたものだと言われました。こういった人たちがホテルを予約し、チケットを買い、自費で時給制の通訳を雇うのです。ここまでの商業的人気を集める日本人選手はいませんし、これまでにいたこともありませんでした。浅田真央でさえ。つまりこれが、あなたからの質問への答えでもあります。ですので、羽生結弦に健康と繁栄を強く願うのです。このことを、世界のショー・マネージャー全員が祈っています。羽生と日本に。

フィギュアスケート全体で起こっていることについて言えば、現在は、第二次世界大戦を戦った我々の祖父たちが、共産主義と普遍的な繁栄が訪れると大切に信じていた時代を、何よりも強く思い起こさせます。後になって、自分の人生すべてを幻想の中に生きていたとまたたく間に理解するのです。目に見えるフィギュアスケートの順調さは、実際はこれとまったく同じ幻想なのです。これは、フィギュアスケートを本当に愛し、それに人生をかけている人たちにとってはとても強い衝撃でしょう。あのアレクセイ・ミーシンやタマーラ・モスクヴィナ、タチヤナ・タラソワ、あのジョン・ニックスやフランク・キャロルのよう偉大な巨人たちにとっては。私たちがフィギュアスケートを失ってしまうことになれば、そういった方々にとってはとても辛いことでしょう。

こういった言葉を読んだロシアはのヘイターの多くはいま、「お前、気でも狂ったのか?ロシアではすべてが素晴らしいじゃないか!」と言うことでしょう。しかし、こういったことをすべて、90年代中盤のアメリカで経験しました。その頃、私たちは屋外で行列に並び、2万人収容のスタジアムへのチケットを訪ね求めていたものです。Champions on Iceは夏には96公演、それに加え冬にはおよそ50公演行われ、それと並行してStars on Iceがおよそ40公演ありました。そしてこれがすべて弾けてしまったのです。私たちがいまいるラスベガスを例に取りましょう。スポーツと興行の街です。フィギュアスケートのスターにローラースケートで一回りしてもらうために、ラスベガス大通りのラスベガス・ストリップが何時間にもわたって封鎖されていたのを覚えています。現在、ラスベガスのメインスタジアムでは二度の世界王者やアメリカ王者が滑っていますが、観客席の状況見ると、控えめに言っても、もうちょっとでもよくできなかったものかと…。

おっしゃられたジュエリーの件に話を戻すと、それは人によって望む物は違うものだと思います。しかしそうであっても、服やアクセサリーや靴、メイクアップアーティストや美容師といったスポンサーを誘致するためのさらなる可能性を開くものになります。


(何と言いましょうか…アワードセレモニーは強い印象を残すものにしようとお閑雅だったのでしょうか。)

実際に、セレモニーは強力なものにしなければなりません。来年の世界選手権は、モントリオール・カナディアンズ(注:ホッケーチーム)がプレイする18,000人のスタジアムで行われます。世界最高のアリーナの一つです。ショー自体は、ISUとカナダ・フィギュアスケート連盟の関与のもと、Art on Ice社が完全にプロデュースします。私たちはもう丸一年もあらゆる交渉やワーキングミーティングを行ってきており、かなりの仕事をしてきています。スポーツ界のスター、音楽・舞台のスターがプレゼンターとなります。そうやって、このプロジェクトにショービジネスの一部を引き込んでいます。


(そのイベントのチケット代は、大会の通しチケット代に含まれているのでしょうか、それとも別にチケットを買う必要が出てくるのでしょうか。)

それはISUに対する質問ですね、単純に私の責任範囲ではありません。テレビ放映の問題も同じです。ただ、入場料は、大会のすべての日程の視聴権を持っていたり、通しチケットを買った人たちと同様になると思います。形式的には、最後のエキシビジョンとまったく同じです。ただ、5位以上の選手を順位順に集めたようなものの代わりに、シーズン全体を通じてフィギュアスケート界に起こった最高のものすべてのデモンストレーションになります。


(特別に創設される賞品のほかに、受賞者に対しては何らかの賞金が出されるのでしょうか。)

現時点ではありません。率直に言うと、その必要は見ていません。各分野で最高と認められるコーチや振付師には、すぐに新しい教え子の行列ができるでしょう。サービス価格はもう変わってしまうかもしれませんが。しかしこれは一瞬のボーナスではなく、終身ボーナスです。それに私は思うのですが、受賞者にとっては、たんなる札束よりも、これ以上ないくらいの価値があるのではないしょうか。



(終わり)



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