コフトゥン:この一年は、人生で最も幸せな年の一つだった

2020年5月10日日曜日

2019/20 コフトゥン 引退

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昨年引退したコフトゥンが、引退後の生活について語っているインタビューがありましたので紹介します。ちょっと前のインタでしょうか。



5/29発売 フィギュアスケートLife Vol.21 (扶桑社ムック)

コフトゥン:この一年は、人生で最も幸せな年の一つだった

https://overtime.life/etot-god-byl-odnim-iz-samyh-schastlivyh-v-moey-zhizni
エレーナ・ハルトルヌィフ / Overtime.life / 2020/4/21



この年は、人生で最も幸せな年の一つとなりました。好きな仕事で終わりのないくらい忙しかったです。ロシア中、そして世界中を訪問することが大きな喜びを与えてくれました。1年を通じ、したかったことをしていました。自分と仕事をしてくれるエージェントがいて、チームもいるけれど、やはりスケジュールを決めるのは自分。それが一番嬉しいのです。好きではないことをせずに、楽しんで仕事をしています。自分の幸せはここにあります。

フィギュアスケートの引退は、是非を考えた、まったく意識的な判断でした。そのため、自分には何か足りないとは私は言えません。しかも、アイスショーのおかげで厳しい変化を感じていません。選手としての演技よりもアドレナリンが強烈に振り切れることもあります。ショーはある意味選手生活の延長です。ただ、ジャッジと評価はもうありません。

アイスショーは、簡単な仕事ではありません。特にリハーサルが夕方6時から朝9時まで続くときは。公演の間に、リンクから別なリンクへと文字通り走っていくこともあります。とても濃い時間です。公演で与えられる役割は自分に合っていて、演じるのが気に入っています。仲間たちも素晴らしいです。この意味で、私にとってはすべてがとてもうまく出来あがりました。公演はどれもお客さんで満席なので、どれか一つのショーを挙げるのが難しいくらいです。よく覚えているのはサンクトペテルブルク公演で、そのときは共演者たちが自分にとって新しい人たちでしたが、すべてがとてもうまく行きました。あたたかな思い出だけが残っています。

近年、フィギュアスケートは人気の面でかなり成長したというのが、私の意見です。とても良いことだと思います。以前は自分に近い競技上の小さなファミリーだけでしたが、いまや莫大な人気を獲得した競技種目となりました。日本では、フィギュアスケートは一番人気のスポーツで、日本人はフィギュアスケートで生きていますが、ロシアでも人気は伸びています。残念ながら、最近の出来事のせいで、私たちのフィギュアスケートの人気をもっと大きくするはずのプロジェクトの多くが中止となってしまいました。例えば、シーズンの締めくくりとして、フィギュアスケート界におけるある種の「オスカー」の初めての授与が計画されていました(編注:ISUスケーティング・アワード・プレミア)。

違いはもちろんあります。演技をするのか、それとも競技会を観客として追うのか。今年、両親と一緒にグランプリ・モスクワ大会に行きました。観客席はいっぱいで、一流の出場選手たちです。全体を見てとても楽しみました。同時に、ジャンプの技術に注目したり、いずれにせよ専門家として演技を評価したり、ミスを確認したりしていました。それはどうやら自動的に起こるものでした。

「第1チャンネル」と「Match TV」で、解説として何度か仕事をしました。コメンテーターとしての仕事はとても気に入っていますが、オファーが自分のプロジェクトとスケジュール的にぶつかることがときどきあります。例えば、キャンセルできない公演やマスタークラスがすでに予定されているなど。ただ、オファーが会って、物理的に可能であればいつでも受けています。最近の中継では、グランプリ大会で解説をしましたが、視聴者からとても良い反響がありました。本物のマエストロであるタチヤナ・アナトリエヴナ・タラソワやアレクセイ・ヤグディンとも仕事をしました。自分のことはできるだけ話さず、ふつうのことではなく視聴者にとって面白い詳細や局面を指摘しようとしました。偉大なコメンテーターの熟練は、陳腐さを回避することにあります。残念ながら、いろいろな競技を見ていると、同じことをもう千回も聞いたという感覚ができてきます。同じコメントがよく繰り返されるので。

腰にはヘルニアが2つあり、もちろんどうしようもありません。できるのは、ヘルニアをケアしながら負荷をかけることだけです。もちろん、身体のコンディションは維持していて、誰に矯正されているわけでもありませんがオフアイスのトレーニングもしています。選手として引退をすると、痛いところがなくなるど、魔法のようなことがありました。しかも引退後は自分にかける時間が増えたので、最初にしたことは健康を取り戻すことでした。いまは心配なことはありません。

モスクワのロシア国立体育大学で、フィギュアスケートのコーチになるべく学んでいます。もちろん、大学で学ぶことができない多くのことを理解しています。しかし、アスリートの医療、心理に関する知識が、余計なものになることはありません。こういったことを、大学のプログラムで教えてもらっています。学業と自分のプロジェクトすべてを同時に進めることは、おかしいかもしれませんが、いま(コロナウイルスのパンデミック中)よりもはるかにうまくできていました。大学に行って、直接人とあって問題を解決していました。遠隔教育はもう悪夢です。つい最近、試験問のまとめをし、準備をして全部覚えて試験を受けました。今年は論文発表があります。いま、とてもたくさんの課題が積み重なっていますが、報告のためだけのものではないかと感じています。すべてが上手く回っているとは言えません。

18歳になったばかりの頃は、車に夢中でした。年を重ねるにつれ落ち着いてきました。3月初め、まだ隔離宣言がされる前のことですが、兄と一緒に車でモスクワからエカテリンブルクへと行きました。飛行機では行きたくなかったのです。いまはどの空港もとても汚い場所だと思えたので。道中、29時間かかりましたが、休みなしで向かいました。運転を交代しながらでしたが、大半の時間を自分が運転しました。自分にとって、自動車でこんな長い距離を走る旅は初めてのこととなりました。車は十分に快適で、便利で、ポジティブな気持ちが残っています。ただ、最後の6時間は嵐の中に入ってしまいました。灯りもなく、人もいなくて、雪以外は何も見えませんでした。とても長い時間、ゆっくりと走っていましたし、しかも夜でした。

モスクワで毎日一人で部屋に閉じこもっているのは不快だったでしょうが、エカテリンブルクには家族みんながいます。両親だけでなく、兄とその家族も。みんな一緒の方がいずれにせよ楽しいでしょう。もちろん、実家で時間を過ごしたくもありました。働いている人以外はみなモスクワから出ようとしていました。この状況が始まる前、父と一緒に仕事でイタリアに行ってきました。そのときはまだキャンセルする根拠はまたくなく、モスクワに帰ってきたときに、イタリアで最初の感染、ミラノで起こったものでしたが、それについて知りました。私は親しい人たちや知人よりも先に、こういったニュースを深刻に受け止めました。

みなさんと同様、インターネットを見て、映画やドラマを見て、家の中で運動をしようとしています。有酸素運動の負荷のないちょっとしたワークアウトをしています。家の中は走れないので。理由なく家からまったく出ないようにしていて、散歩もしていません。悪夢のようにつらいとは言えませんが、もちろん外出して新鮮な空気を吸いたいとは思います。犬の散歩だけは外出しますが、玄関から離れるのは最小限にしています。

いま、一つだけ良いことがありました。この状況のおかげで、実家に両親といられることです。スケジュールの都合で、エカテリンブルクにいることはほとんどありません。今年はプロジェクトがたくさんありますし、これまではいつもフィギュアスケートをしていて帰省することはほとんどありませんでした。いま、仕事はすべてモスクワだけです。実現するまでは物事を語らない方ですが、パンデミックが始まる直前まで、個人的な仕事の大きな計画がありました。もちろんすべて延期です。いま、将来について具体的なことを話せる人は世界にいないと思います。もう仕事をしたいのですが、すべてがおさまるのをただ待っています。


(終わり)


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