ロシアForbes誌が、主に最近引退したアイスダンス選手であるベチナ・ポポワのインタビューをもとに、ロシアでのフィギュアスケート選手にかかる費用やフィギュアスケート連盟の費用負担についての記事を掲載しているので、前後編で紹介します。今回の前編は、練習やプログラムの振り付けにかかる費用についてです。
なお、今朝(2020/5/19)確認したところでは、1ルーブルは1.5円くらいです。
貧乏人のための競技ではない -ザギトワレベルの選手を育てるにはいくらかかるのか
(前)練習と合宿/プログラム振付 ← この記事
(後)衣装と装備品/音楽/給料と賞金


マリーナ・クルィロワ / Forbes / 2020/5/14
スパンコール付き衣装が2,500ドル、プログラム振付が10,000ドル、スケート靴に50,000ルーブル、そして練習には時間制の費用 - フォーブズ誌が、なぜフィギュアスケートにはお金がかかるのかを説明する
2014年ソチオリンピックの大成功や、全国テレビでのアイスショー・シリーズは、フィギュアスケートをロシアで最も人気のあるスポーツの一つにした。いまやグランプリ大会の中継は第1チャンネルのプライムタイムを奪い、エテリ・トゥトベリゼ・コーチはウラジーミル・ポズネルの番組にゲストとして登場し、オリンピック金メダリストのアリーナ・ザギトワは高級誌の表紙にあちこち登場している。フォーブス誌の「30歳未満の30人」リストも、2019/2020シーズンの大会すべてで優勝した16歳のアリョーナ・コストルナヤというフィギュアスケート選手なしではいられない。フィギュアスケートのトップ選手育成にはいくらお金がかかるのか、そして誰がそれにお金を出しているのか。
フィギュアスケートの練習は、氷上練習、コレオクラス、トレーニングジムでのトレーニングで、丸一日かかる。ロシア強化選手の練習にかかる費用は、通常フィギュアスケート連盟が補償している。
「ロシアのトップ選手は完全な費用負担を当てにできます。」と、2019年ユニバーシアードのアイスダンス金メダリストであるベチナ・ポポワ(相手はセルゲイ・モズゴフ)は述べている。「連盟は、衣装についても、外国でのプログラム振付についても支払ってくれます。しかし、強化選手入りを目指す選手にとって、フィギュアスケートは支払いばかりです。例えば、コーチとの個別レッスンにも費用がかかります。ほぼすべてのグループにそれぞれの価格表があります。支払いはコーチや選手のレベルにより、月10,000ルーブルから100,000ルーブルです。私とパートナーはコーチ(フォーブス注:1998年オリンピック銀メダリストのアンジェリカ・クルィロワ)に自分たち自身でお金を払っていました。彼女は連盟やスポーツ省、それに私たちのいたスクールから給料はあったのですが。ただ、私たちには賞金はなかったので、コーチにもその取り分はありませんでした」。
それ以外に、選手にとって追加的な個別レッスンが必要になることがよくある。その価格は、1時間2,000ルーブルから10,000ルーブルまで様々である。「そしてこれはエヴゲニー・プルシェンコや他の有名な選手やコーチのことは考慮に入れていません。」とポポワは述べる。「追加レッスンの数は、両親とその支払い能力にだけ依存するものです。1日に2回、週に6日追加レッスンをしている子供もいます。フィギュアスケートは、貧乏人のための競技ではありません」。
練習合宿費用も連盟が支払うが、個別グループの予定が常に中央集権化された育成スケジュールに合うわけではない。「例えば、ソチでの練習合宿について費用負担をしてもらえる予定でした。」とポポワは説明する。「しかし、合宿には強化選手のみが認められ、私たちのグループ全員が行くことはできませんでした。コーチはブルガリアに行くことに決めたので、私とパートナーももちろんそちらに行きましたが、すべて自己負担でした」。
ヨーロッパやアメリカでは、リンクの貸し切りにも、1時間50ドルまでの大きな金額を支払わなくてはならない。ロシアではこのような慣行は稀である。「ロシアでは通常、コーチにリンクの時間が割り当てられています。」とポポワは説明する。「または、ただ一般営業に来るだけです。個別練習のためのリンク貸し切りは、モスクワではクレイジーな値段で、夜間でも1時間に13,000ルーブルにもなります。比較のため、ペテルブルクでは1時間6,000ルーブルで落ち着いて貸し切りができます」。
プログラムに関する作業を完全に担当できる正規の振付師がいるグループもある。例えば、エテリ・トゥトベリゼ・グループのダニール・グレイヘンガウスなど。
選手は外国のスペシャリストに依頼することもある。最も流行っている振付師であるカナダのシェイリーン・ボーンやローリー・ニコルの振付には、10,000ドル以上を支払う必要がある。ロシアでの完全なシニアのプログラムの平均は2,500ドルである。
「強化選手には、プログラム振付費用が負担されます。」とポポワは述べる。「一定の金額が割り当てられて、自分でそれをどのように使うのかを決めます。私たちはプログラムについて60,000ルーブルありました。また、例えば、まだまだ幼いジュニア第3クラスのフリー・プログラムは、20,000ルーブルかかります」。
アクロバットのコーチやタンゴ教師などの特殊なスペシャリストのレッスンにたいしても、追加的に1時間3,000-10,000ルーブル支払わなければならない。「2018/2019シーズンのリズムダンスにはタンゴが選ばれました。」とポポワは述べる。「それで、私とパートナーは追加で1時間7,500ルーブルでレッスンを受けていました。また難しいリフトを教えてもらうためにアメリカから軽業師に来てもらいました。正確には覚えていませんが、金額は少なくありませんでした。支払いはもちろん時給制です」。
(続く)
なお、今朝(2020/5/19)確認したところでは、1ルーブルは1.5円くらいです。
貧乏人のための競技ではない -ザギトワレベルの選手を育てるにはいくらかかるのか
(前)練習と合宿/プログラム振付 ← この記事
(後)衣装と装備品/音楽/給料と賞金
5/28発売 フィギュア・スケーターズ・プラス 4(表紙:羽生結弦)
貧乏人のための競技ではない - アリーナ・ザギトワ・レベルのフィギュアスケート選手を育てるにはいくらかかるのか
https://www.forbes.ru/biznes/400335-eto-sport-ne-dlya-bednyh-skolko-stoit-podgotovka-figurista-urovnya-aliny-zagitovoyマリーナ・クルィロワ / Forbes / 2020/5/14
スパンコール付き衣装が2,500ドル、プログラム振付が10,000ドル、スケート靴に50,000ルーブル、そして練習には時間制の費用 - フォーブズ誌が、なぜフィギュアスケートにはお金がかかるのかを説明する
2014年ソチオリンピックの大成功や、全国テレビでのアイスショー・シリーズは、フィギュアスケートをロシアで最も人気のあるスポーツの一つにした。いまやグランプリ大会の中継は第1チャンネルのプライムタイムを奪い、エテリ・トゥトベリゼ・コーチはウラジーミル・ポズネルの番組にゲストとして登場し、オリンピック金メダリストのアリーナ・ザギトワは高級誌の表紙にあちこち登場している。フォーブス誌の「30歳未満の30人」リストも、2019/2020シーズンの大会すべてで優勝した16歳のアリョーナ・コストルナヤというフィギュアスケート選手なしではいられない。フィギュアスケートのトップ選手育成にはいくらお金がかかるのか、そして誰がそれにお金を出しているのか。
練習と合宿
フィギュアスケートの練習は、氷上練習、コレオクラス、トレーニングジムでのトレーニングで、丸一日かかる。ロシア強化選手の練習にかかる費用は、通常フィギュアスケート連盟が補償している。
「ロシアのトップ選手は完全な費用負担を当てにできます。」と、2019年ユニバーシアードのアイスダンス金メダリストであるベチナ・ポポワ(相手はセルゲイ・モズゴフ)は述べている。「連盟は、衣装についても、外国でのプログラム振付についても支払ってくれます。しかし、強化選手入りを目指す選手にとって、フィギュアスケートは支払いばかりです。例えば、コーチとの個別レッスンにも費用がかかります。ほぼすべてのグループにそれぞれの価格表があります。支払いはコーチや選手のレベルにより、月10,000ルーブルから100,000ルーブルです。私とパートナーはコーチ(フォーブス注:1998年オリンピック銀メダリストのアンジェリカ・クルィロワ)に自分たち自身でお金を払っていました。彼女は連盟やスポーツ省、それに私たちのいたスクールから給料はあったのですが。ただ、私たちには賞金はなかったので、コーチにもその取り分はありませんでした」。
それ以外に、選手にとって追加的な個別レッスンが必要になることがよくある。その価格は、1時間2,000ルーブルから10,000ルーブルまで様々である。「そしてこれはエヴゲニー・プルシェンコや他の有名な選手やコーチのことは考慮に入れていません。」とポポワは述べる。「追加レッスンの数は、両親とその支払い能力にだけ依存するものです。1日に2回、週に6日追加レッスンをしている子供もいます。フィギュアスケートは、貧乏人のための競技ではありません」。
練習合宿費用も連盟が支払うが、個別グループの予定が常に中央集権化された育成スケジュールに合うわけではない。「例えば、ソチでの練習合宿について費用負担をしてもらえる予定でした。」とポポワは説明する。「しかし、合宿には強化選手のみが認められ、私たちのグループ全員が行くことはできませんでした。コーチはブルガリアに行くことに決めたので、私とパートナーももちろんそちらに行きましたが、すべて自己負担でした」。
ヨーロッパやアメリカでは、リンクの貸し切りにも、1時間50ドルまでの大きな金額を支払わなくてはならない。ロシアではこのような慣行は稀である。「ロシアでは通常、コーチにリンクの時間が割り当てられています。」とポポワは説明する。「または、ただ一般営業に来るだけです。個別練習のためのリンク貸し切りは、モスクワではクレイジーな値段で、夜間でも1時間に13,000ルーブルにもなります。比較のため、ペテルブルクでは1時間6,000ルーブルで落ち着いて貸し切りができます」。
プログラム振付
プログラムに関する作業を完全に担当できる正規の振付師がいるグループもある。例えば、エテリ・トゥトベリゼ・グループのダニール・グレイヘンガウスなど。
選手は外国のスペシャリストに依頼することもある。最も流行っている振付師であるカナダのシェイリーン・ボーンやローリー・ニコルの振付には、10,000ドル以上を支払う必要がある。ロシアでの完全なシニアのプログラムの平均は2,500ドルである。
「強化選手には、プログラム振付費用が負担されます。」とポポワは述べる。「一定の金額が割り当てられて、自分でそれをどのように使うのかを決めます。私たちはプログラムについて60,000ルーブルありました。また、例えば、まだまだ幼いジュニア第3クラスのフリー・プログラムは、20,000ルーブルかかります」。
アクロバットのコーチやタンゴ教師などの特殊なスペシャリストのレッスンにたいしても、追加的に1時間3,000-10,000ルーブル支払わなければならない。「2018/2019シーズンのリズムダンスにはタンゴが選ばれました。」とポポワは述べる。「それで、私とパートナーは追加で1時間7,500ルーブルでレッスンを受けていました。また難しいリフトを教えてもらうためにアメリカから軽業師に来てもらいました。正確には覚えていませんが、金額は少なくありませんでした。支払いはもちろん時給制です」。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿