ヴォロノフ:誰にでもそれぞれの時期と、願いと、我慢と、意志がある(3・終)4回転ジャンプと精神的障壁

2019年8月2日金曜日

2019/20 ヴォロノフ コストルナヤ シチェルバコワ トルソワ メッシング 羽生結弦 女子 男子

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昨シーズン、グランプリファイナルに出場するも怪我のためにロシア選手権に出られなかったセルゲイ・ヴォロノフが、デニス・テンについて、また今後について語っているインタビューが、ロシア・フィギュアスケート連盟ウェブサイトに掲載されていましたので、3回に分けて紹介します。

今回は第3回、ラストです。

ヴォロノフ:誰にでもそれぞれの時期と、願いと、我慢と、意志がある
(1)デニス・テン/進退について 
(2)新プログラム/新ルール
(3)4回転ジャンプと精神的障壁 ← この記事



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セルゲイ・ヴォロノフ:誰にでもそれぞれの時期と、願いと、我慢と、意志がある

2019/7/29 / タチヤナ・フレイド / ロシア・フィギュアスケート連盟

続き


(しかし、昨年有効となったルール変更は、専門家の意見ではフィギュアスケートの進歩にブレーキをかけたと言われています。というのも、例えば男子では4回転ジャンプの数を減らし、クリーンでそれほどリスクを取らない滑りにアクセントを置いているなど。)

男子はそうですが、女子はその逆です。今シーズンどうなるか見てみましょう。男子は興味深いシーズンが待っていますが、女子も、ロシアのジュニア女子がシニアに上がりますから。


(ロシア女子の方が男子よりも4回転を多く跳んでいることは悔しくないですか?)

私は悔しくはありません。というのも、これまでの人生でたくさん4回転を跳んできましたから。反対に、トリプルアクセルに挑戦しているロシア女子、つまりアーニャ・シチェルバコワ、サーシャ・トルソワ、アリョーナ・コストルナヤをとてもうれしく思います。どれくらいの犠牲を払って到達できるものなのか、どれだけの力と身体をかけてきているのか、わかるからです。それがどんなに大変なことかわかるので、妬みは感じません。怠け者と凡庸な人間だけが、そういった選手たちに妬みを感じ得るのです。個人的には、女子の成果に対しては尊敬しかありません。


(女子がこのような難しいジャンプを跳べるようになったのはなぜか、どうお考えですか?体重が少なくて回転がしやすいとか、身体的に楽なのでしょうか。)

彼女たちが非常にたくさんの練習をしているからです。本当にそうなんですよ。練習なしでは何もありえません。


(もしかすると、精神的な障壁が克服できているからとか。)

もちろんです。誰か一人ができるようになると、その後に別な者が続きます。というのも、「彼ができたのだから、なぜ自分が挑戦してはいけないのだろうか?」と思って練習に入るからです。選手たちが同じグループで滑っていて、毎日友人たちがやっていることを見ていればなおさら、精神的な障壁はすべてすぐに消えるでしょう。


(女子は新たな4回転に挑戦していますが、男子のクワドアクセルの見通しについてはどう思われますか?)

自分の力を信じている者であれば、なぜできないことがあるのでしょうか。キーガン・メッシングが練習で挑戦しているのを見ましたし、羽生結弦はそのジャンプを練習していましたが、怪我のためにすべてを中止しました。興味深いことです。以前はトリプルアクセルがウルトラCのエレメントと考えられていました。今でも難しいジャンプです。4回転半、それはもう別の歴史となるものです。というのも、身体全体に別な負荷がかかるからです。着氷がうまく行かないだけで、そのミスの代償はあらゆる意味で増大してしまいます。しかし、クワドアクセルはジャンプの王者であり、それを跳ぶ選手を別の選手と比べて強く押し上げるものです。


(挑戦したいとは思いませんか?素晴らしいトリプルアクセルをお持ちですから。)

クワドアクセルは遠慮しておきます。その問題は「物理」にあるわけでもないのです。経験豊かなスケーターのコンディションが良いという意味は、若い選手との一番の違いは、おそらく、回復により長い時間がかかるということです。一方、問題は心理面、精神面にあります。成熟した年令になると、あらゆることをより意識的にするようになります。これには、プラスの意味もありますが、マイナスの意味もあります。


(しかし、クワドループは跳ばれましたね。)

競技会ではまだクリーンには跳んでいません。


(練習では。)

跳んだとか跳ばないとかは、そのジャンプが競技会でクリーンに跳べたときにだけ言えることなんですよ。例えば、羽生は競技会でクワドループを跳んでいましたから、跳べるという権利があります。自分については、クワドループを跳ぼうとしましたが、今のところうまくいっていない、と言えるでしょう。成功したら、このジャンプがプロトコルに記載されて、つまり、跳べたと言います。自分のジャンプを映像に撮って練習でできていることをアップするのは、真剣なことではありません。練習は練習で、競技会はまったく別のものです。練習でのピエロや王様はたくさんいます。競技における偉大なる功績の一番の違いはどこにあるのでしょうか?それは、競技会に出て、それを必要な時かつ必要な場所でしなければならないということです。アドレナリンが出ているときに。そして、チャンスはたった1回です。それが、メダルの代償なのです…。


(正しく理解しているとすれば、練習と競技会の違いは、競技会前の精神的障壁の克服にあるということでしょうか。)

恐怖を克服することです。正直に言いましょう。大会前は誰もが不安になります。しかし、自分をコントロールする能力がある人もいますし、それをうまくできる人もいれば、できない人もいます。

おかしな話かもしれませんが、ここに競技の魅力もあるのです。選手がそれでも引退できないという、その理由がこの状態なのです。競技会前は、心理的状態さえも少し変わります。まるで別の次元にいるのような。人生でこんなことを体験できるのは、他にあるでしょうか?パラシュートで初めて飛び降りる時?バイクで猛スピードを出す時?後は何がありますか?しかし、あらゆることには慣れてしまうでしょう。「麻薬」のように。しかしスポーツにおいては、大会は毎回毎回初めてのものとなるのです!


(大会へはどのように準備されるのでしょうか。)

「簡単なことだよ…」という番組を思い出します。特に秘密もないですし、特別なトリックもありません。毎日の、苦役のような作業、これが答えのすべてです。競技会では、身体的に整えるだけでなく、何よりもまず頭をオンにしなければなりません。自分の波に乗り、波を逃すことをしなければ、成功のより大きなチャンスを掴めます。


(ルーティンは何かありますか?)

枯葉に火をつけることも、人形を持ってくることもしません。練習と、物理的なものを信じています。十分に練習すれば、それを見せることができるでしょう。準備ができていないなら、奇跡をあてにするなんて笑えますね。


(ありがとうございます。セリョージャ、成功を。)


(終わり)

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