昨シーズン、グランプリファイナルに出場するも怪我のためにロシア選手権に出られなかったセルゲイ・ヴォロノフが、デニス・テンについて、また今後について語っているインタビューが、ロシア・フィギュアスケート連盟ウェブサイトに掲載されていましたので、3回に分けて紹介します。
ヴォロノフ:誰にでもそれぞれの時期と、願いと、我慢と、意志がある
(1)デニス・テン/進退について ← この記事
(2)新プログラム/新ルール
(3)4回転ジャンプと精神的障壁
8/1発売 フィギュア・スケーターズ15 FIGURE SKATERS Vol.15
(続く)
ヴォロノフ:誰にでもそれぞれの時期と、願いと、我慢と、意志がある
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(2)新プログラム/新ルール
(3)4回転ジャンプと精神的障壁
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セルゲイ・ヴォロノフ:誰にでもそれぞれの時期と、願いと、我慢と、意志がある
2019/7/29 / タチヤナ・フレイド / ロシア・フィギュアスケート連盟
(セリョージャ(ヴォロノフ)、デニス・テン記念ショーのためにいらっしゃったあなたとここアルマトイでお話しているわけですが、昨シーズン、デニスはあなたのプログラムを1つ振り付けていました。デニスの命を奪った悲劇を経て、このナンバーを滑るのはどのようなお気持ちだったのでしょうか。)
最初のポーズにつくときはいつも、意識的にデニスに話しかけていました。「もし私の声が聞こえるなら、ちょっとだけでも良いので助けてください」と。責任感に強く押しつぶされそうだったので。このプログラムで大会に出場するというのは、ただ滑り切るという意味ではなく、彼に対する然るべき敬意、記憶を入れ込むということなのです。
正直に言うと、なぜこんなことが起こったのか、白昼にこのようにいったいどうやって人を殺せるのか、いまでもわかりません…。
神は最高の人たちを選んでいると言います。そしてデニスは私たちの中で最高の人間でした…。いつか、別の人生で出会えると信じたいです…信じています…。
(恐ろしい惨劇でした…。皆が事件に衝撃を受けました。っそいて、デニスの両親を支えるため、然るべき敬意を払うため、これだけのフィギュアスケーターがショーにやってきてくれました。)
昨シーズン、デニスはプログラムの振り付けをすることに同意してくれて、私のことを強く支えてくれました。彼の側から言えば、これは寛容な態度で、私は感謝していました。デニスとの練習はとても面白かったです。多くの振付師は、自分たちに都合の良いように振付をしますが、デニスはそれぞれに個別のアプローチをしていました。スケーターの話を聞き、選手自身がまず自分が何をしたいのか、どういう風に見ているのかを説明するよう背中を押していました…。デニスとの仕事が長く続かなかったのは残念です…。この悲劇がなければ、デニスは一流の振付師として花開いたものと確信しています。
(セリョージャ、ご自身について話をすることにしましょう。昨シーズン、出だしは校長で、グランプリ大会で表彰台に上り、ファイナルに出場しました。しかしロシア選手権前で怪我をして出場できませんでした。スケートで怪我は珍しいことではないとはわかっています。しかし、すべてこううまく行っていたのに突然、というのは…。ご自身にとってショックでしたか?)
不可抗力でした。競技で一番悔しいことは、怪我をしてそのせいで大会に出られないことです。家に残って、観客として大会を見るというのは、現役のスケーターにとって精神的にとても辛いということはおわかりいただけるんじゃないでしょうか。
しかし時間の経過とともに、そのようなことは弱き者を壊しますが、強き者はより強くなります。私の場合は諦めることはしませんでした。それで良かったと思います。今は、後ろは振り返らず、将来を見据えています。そう、シーズンは素晴らしかったです。グランプリ大会で良い滑りができてファイナルに選抜されたことは嬉しいです。バンクーバーオリンピックには出られなかったのに、いま、その8年後に、ファイナルまで突破できたのだとさえ、そのとき思いました。つまり、自分の目標にたどり着く能力があるのだということです。
(諦めず、引退されないことを嬉しく思います。引退について考えられましたか?)
そのことについては、他の人の方があまりにも多くのことを考えているようです。私は目も見えますし耳も聞こえます。誰にでもそれぞれの時期と、願いと、我慢と、意志がある、と言っておきましょう。チームのみんなとこの問題について話し合ったとき、誰も突き放すようなことはしませんでした。「何言ってんだ?考えすぎるな!」と。そして実際、私は滑りたいのです。私の個人的な願いです。自分のすべきことが本当に好きなら、失敗は背中を押すばかりでしょう。そしてこのことは失敗でさえなく、誰の人生にでもよくある試練で、乗り越えるか、砕けるかのどちらかです。
(続く)
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