ロシアからポーランドに国籍を変更し、いまは羽生と同じクリケット・クラブで練習しているエカテリーナ・クラコワの、1月の記事を前後編で紹介します。ジュニアとシニアの両方に出場して、ワルシャワカップでは金メダルを獲った選手です。
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エカテリーナ・クラコワ:国籍を変えたのは、長く滑り続けたいから
アナトリー・サモフヴァロフ / R-Sport / 2020/1/28
ポーランドは親切な人たち、カナダはリスやアライグマ、スカンク
(ポーランド人はロシア人が嫌いだというステレオタイプは昔からありましたが。)
それは本当ではありません!私もそう言われていましたが、まだロシア国籍を持ったまあポーランドに来ていたときも、まったく反対のことを感じていました。私がロシア人だと知ったタクシーの運転手が、自分でロシア語を思い出してロシア語で私に話しかけようとしてくれたことがありました。かつての世代のポーランド人は、ロシア語を強制的に学んでいたからです。今でもロシア語を覚えていたり、詩を読んだりする人も多いです。今は、ロシアの女の子がポーランドに来て、ポーランド語を習得したというとみんな感激してくれます。ですので、ポーランドのロシア嫌いは、すべてステレオタイプで本当のことではないと私には思えます。
(ポーランド語はもう習得したのですか?)
はい、特に夏、ポーランド語の形式を身につけました。グーグル翻訳を開いて、スターバックスに通っていました。すぐに落ち着いて話せるようになり、理解と言いたいことを言うには問題なくなりました。もうポーランド語で、テレビでもインタビューがありました。今年はよくポーランドに行っていました。カナダのビザ手続きが遅かったので、ほぼ3ヶ月はポーランドにいました。
(ポーランドで何が一番好きですか?)
私が住んでいるトルンという街が大好きです。小さくて美しい、散歩が気持ち良いヨーロッパの街です。それから、周りの人たちも好きです。とても親切で優しく、いつでも助けてくれて支えてくれます。
(代表を務めるために新たな国に向かうと決めたあと、ネガティブな反応に直面することはありませんでしたか?)
ヘイトはほとんどありません。ときどきあっても、注意を向けないようにしています。人はそれぞれ自分の選択をしています。私はあらゆることをポジティブに捉えるので、ネガティブは私に沈殿することはありません。
(というと?)
ひどい言葉をたくさん書いて間違いを指摘する人がいたとします。悪態についてはスルーして、具体的なことはまったく適切に受け入れます。演技であまりステップができなかったことが気に入らない人はいるでしょう。そういうこともあると同意しますし、ブライアン(オーサー)とともに修正を始めます。そういったヘイトがモチベーションになることもあります。インスタグラムではいろいろたくさん書かれていましたし。
(トロントの「クリケット・クラブ」ではいつもポジティブな雰囲気が支配してるのでしょうか。)
私はそう思います。
(だれがその雰囲気を作り出しているのですか?)
みんな一緒にです。リンクではコーチも選手もみんなとても好意的です。みんなが、お互いを理解する態度をとっています。私たちは落ち着いてコーチの下へ行き、競技のことだけでなく生活のことについても話したりできます。なにか不安なことがあったら、ブライアンと共有できます。ただ、いまのところは心の鬱のようなものをもってコーチのところに行ったことはありません。天気のことをよく話したり、ブライアンは脚が痛むということを言ってくれたり。それから年齢のことを話したり…。
(彼にとってあなたはロシア人なのでしょうか。)
いえ、私はポーランドを代表していますから。とはいえ、「ほら、そこの日本人!」だとか、「おい、そこのロシア人!」といったことはここではありません。ブライアンは、それぞれの選手に対して自分の子供のように接しています。彼は気遣いができる人です。
(特に仲良くなった人はいますか?)
自慢するわけではないですが、地元の心理カウンセラーみたいなことをすることが時々あります。友人が私のところによく話に来てくれて、私は良い言葉を言ってハグします。選手がリンクで私のところに近づいてきて、私に「ああ、カーチャ、疲れたよ」と言ってきたら、「大丈夫!あなたは最高だから!」と答えると、彼はまた4回転を5回も跳びに行きます。とは言え、これは羽生選手のことではないです。結弦ともよく話をしますが、彼はそんなにオープンな人ではありません。彼は、より自身の中にいる人です。挨拶をして、丁寧に質問を交わしたりはしますが、日常のことについては喋ったりはしません。
(カナダとポーランド、どちらのほうが居心地はいいですか?)
わかりません。どこも、それぞれ良いところがあります。クリケットクラブでは、練習のプロセスが高いプロのレベルで作り上げられています。練習にとって最高の環境です。それに、ブライアンともとてもあたたかい関係です。ポーランドでは、素晴らしい技術スペシャリストでアイスダンスのコーチであるシルヴィア・ノヴァク=トレンバツカが助けてくれますし、それにたくさん友人もいますし、ロシアにも近いので母や祖母がよく来てくれます。カナダでは一人のこともよくあります。
(フィギュアスケート選手はだいたいみなさんお母さんと一緒に暮らしていますね。)
私は一人のときもあります。アドバイスが必要なら電話します。ただ、問題のある子であったことはなく、母と父は私が責任感のある人間だとわかってくれています。パスポート上は17歳ですが、精神的にはもっと上に感じています。国籍変更の関係で、15歳から一人暮らしをしなくてはならないことがときどきありました。そういった状況が、自分自身の世話をすることを覚えさせてくれました。書類を提出するプロセスが8ヶ月に及び、その間は一人で練習することもよくありました。楽ではない期間で、自分の周りに誰もいないことも時折ありました。しかし、こういった困難は自分を強くするばかりでした。いま、気持ちが良くないときには、そのときのことを思い出して、いまの問題はつまらない些細なことだと認識します。
(マクシム・トランコフは、カナダとロシアは正反対だと、あるインタビューで私に言っていました。ロシア人とカナダ人は似ているけれど、カナダ人の方がすべてについてより好意的だと。)
そういった違いには気づくことはなかったです。私にとってカナダは、どこにでもリスやシマリスがいるということです。家のすぐそばにスカンクやアライグマが住んでいます。そこではリスは落ち着いて走り回っていて、スカンクが私に近寄ってきたこともありました。ショックでした。凄いと思って、大好きになりました。
(続く)
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