グレイヘンガウス:女子でも4回転が跳べると、まずコーチが頭の中のハードルを超える必要があったと思う(前)GPFでの各選手の演技/女子の4回転

2020年4月14日火曜日

2019/20 グレイヘンガウス コストルナヤ ザギトワ サムソノフ シチェルバコワ チェン トルソワ 羽生結弦 女子

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2019年12月の、トリノGPF後ロシア選手権前のグレイヘンガウス・コーチのロングインタビューがロシア・フィギュアスケート連盟公式サイトに掲載されていましたので、前後編で紹介します。

前編は、GPFでのコストルナヤ、シチェルバコワ、トルソワ、ザギトワ、サムソノフの演技についてや、女子の4回転現象について語っています。


ダニール・グレイヘンガウス:女子でも4回転が跳べると、まずコーチが頭の中のハードルを超える必要があったと思う
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ダニール・グレイヘンガウス:女子でも4回転が跳べると、まずコーチが頭の中のハードルを超える必要があったと思う

ロシア・フィギュアスケート連盟公式サイト / 2019/12/20



(アリョーナ・コストルナヤが、1年前のバンクーバーJGPFと同様、シニアのグランプリファイナルで優勝しました。彼女のトリノでの演技について、どのように思われますか?)

アリョーナは然るべく金メダルを獲りました。両プログラムをクリーンに滑って。コレオも素晴らしかったです。彼女が持っているエレメンツでも、非常に高い得点を獲得でき、世界記録が達成できることを示しました。

さらに練習を続けます。いずれにせよ前進しなければなりません。可能性があれば、4回転も習得するか見てみましょう。シーズン中は時間がないですし、怪我のリスクも非常に大きいので、このことについて話すのは難しいです。


(チームの別の教え子であるアンナ・シチェルバコワは銀メダリストになりました。彼女の滑りをどう評価しますか?)

トリノでアーニャ(シチェルバコワ)は、現時点で最高のショートの演技でした。パーソナルベストを更新したので、ショートについてはまったく問題は有りませんでした。ただ、3Aを加える必要はありますが。

フリーについては、初めて4Fに挑戦しました。4Lz2本でプロを滑ってクリーンな演技を達成することはできるので、これはリスクだとわかっていました。このことについて私たちは競技しましたが、アーニャ自身は難度を上げて新しいクワドに挑戦したいと望んだのです。実際、グランプリファイナルでなければどこで挑戦ができたでしょうか?挑戦して、リスクをとることが。

この先、ロシア選手権や、願わくば重要な大会が待っていますが、より難度の高いエレメンツを滑り込んでいく必要があります。ですので、アーニャが新たなバージョンのフリーに対応して、しかもとても高いPCSももらえて2位になれたことを、祝福します。


(アレクサンドラ・トルソワは、多くの男性でもなしえない、フリーに5本(!)の4回転ジャンプを予定していましたが、銅メダルとなりました。)

サーシャ(トルソワ)はショートで3Aに挑戦しました。習得したばかりで安定性は、今後良くなるだろうと願うばかりでした。そんなリスクでしたが、やはりサーシャですね!協議することもありませんでした。より難しいジャンプを跳ばないようサーシャを説得するのは不可能です。

私たちは、目標はオリンピックで、それに向けた準備がもういま進んでいると理解しています。サーシャがオリンピックで見せたいと思っているコンテンツとプログラムの滑り込みを始めるのが早ければ早いほど、必要なときに彼女にとって楽になります。

5本の4回転を入れたフリーの滑りについては、何か語るのは難しいです。とはいえ、羽生結弦とネイサン・チェンは、一つのプログラムに5本の4回転を高いレベルで跳べることを証明しました。トリノでサーシャは4Sがうまく行かずパンクとなり、10-12点を失いました。

こんな数の4回転は常にリスクです。1つのミスで3位になったり、1つ降りれば1位になったりするのです。まさにこれが興味をさらに喚起するものなのです。もちろん、最も重要な局面では、サーシャが最大限の成績を残せるよう、4回転の数を最終的に管理しきることはできるかもしれません。しかし、彼女が成長し、前進しているうちは、やりたいと思うでしょうし、そうなると成長したいという志向を持つ者を止めることはできません。


(アリーナ・ザギトワは素晴らしいショートを滑りましたが、フリーではミスがありました。何が起こったのだと思われますか?)

まったく異なった気持ちの2日間でした。

アリーナはショートで、ジャンプからステップシークエンス、スピンに足るまで、演技の中のすべてのエレメンツを理想的な一体感を見せてくれたので、とても誇らしく思いました。しかも、感情面でも、アリーナは私がこの振付で見たかったものを伝えてくれました。しかし、フリーではまったく逆のことが起こってしまいました…。

演技の前後でアリーナの中で何が起こったのか、私にとっては難しいことです。勝利や敗北からスケーターが感じる気持ちを、他の人がすべて感じることは不可能です。私たちができるのは、アリーナを支えて、この難しい局面で彼女のそばにいることだけです。アリーナは強い気持ちを持った人ですから。


(あなたのチームのもう1人の選手、ダニール・サムソノフは、キャリア上初めてのジュニアグランプリファイナルで銅メダルを獲りました。彼はその年令に似つかわしくない高レベルのシニア選手のような印象を見せましたが、正しいでしょうか。)

ダーニャ(サムソノフ)は、すべきこと、練習に対する態度が秀でています。常に集中して真面目です。彼に笑いを求めるのは難しいですが、練習にとっては良いことです。ダーニャには目標があります。オリンピックだというのはおわかりでしょう。そして自分の目標に向かって進んでいます。彼はまだまったく若い選手です。国際舞台のジュニアで演技する最初の年、最初のシーズンです。

残念ながら、ダーニャはショートの3Aでミスをしました。このプロを彼はクリーンに滑れて高い点数をもらえるのですが。トリノではもちろん良い成績を獲るのには足りませんでした。フリーでもミスがありました。コンビネーションを一つ跳べなかったので。そして、このような演技で3位となれたのは、良い結果だったと思います。

この先、ロシア選手権に向けて準備を進めます。トリノでは4回転1本でしたが、練習ではルッツとフリップの2本で跳んでいます。ただ、すべてをより安定させるためには、滑り込む必要があります。


(あなたのチームの女子や、アメリカのアリサ・リュー、ロシアのリーザ・トゥクタムィシェワ、日本の女子選手たちは、演技で4回転や3Aを跳んでいます。女子スケートでのこのような現象の理由は何だと思われますか?)

まずコーチが、女子の4回転を跳べると、頭の中で意識のハードルを超える必要があったと思われます。問題はすべて、私たちがこれまでにそんなものを見たことがなかったというところにありました。もちろん、わずかにそういったことはありましたが、誰もそれが必要だとか、それができるとは思っていませんでした。最大の困難は、その境界を精神的に超えるところにありました。今や私たちはそれがまったく現実的であり、限られた選手がだけが跳ぶものではないことを目の当たりにしています。ロシアだけではありません。これは、私たちが全世界を発展へと後押しして、世界が私たちに応えてくれた、ということを示しています。同じような4回転ジャンプを擁する新たなライバルたちがますます現れつつあります。この進歩は止められません。

もうこれは、男子と同様、平凡なものになるでしょう。以前は男子も3Aや、その後4Tを跳んでいて、これがかなり長い期間続きました。最高でも4Tを2回でした。

その後ティモシー・ゲーブルが4Sを跳びました。それからブランドン・ムロズが4Lzを跳びました。4回転ジャンプを跳んだ者たちは、「サルコウが跳べるのだから、ルッツが跳べないはずがあろうか?」と考えたのです。多くの選手にとって、ルッツはサルコウより楽です。そして、男子はトウループだけでなく他の4回転も跳ぶようになりました。プログラムの中の4回転ジャンプの数は増加しました。

ですので、女子スケートでも同じことが起きたのは驚くことではありません。3Aを跳ぶ女子選手の数は増えました。いま、私たちは、フィギュアスケートを始める女の子にとってこういったジャンプはノルマになりつつあるという結論に達しました。女子選手が4回転や3回転半を跳んでいる大会を、その女の子は見ているのです。それで、その女の子は自分も4回転を跳びたいという思いで練習に進んでいくのです。

単に、起こるはずだった跳躍が起こったというだけです。女子シングルの難度はすでに「滞留」していたので。

私たちはこんな形の女子フィギュア・スケートを見ていなかったので、受け入れるのは難しかったでしょう。しかし、フィギュアスケートに来つつある、そしてこれから来る若者たちは、ある程度の時間が過ぎたら、女子が4回転を跳んでいなかった時期があることを変だと思うことでしょう。


(つまり、かなりの程度は精神的な問題だと。)

ええ、単にコーチ自身がこれを受け入れる用意ができていなかったというだけです。現在、4回転じや3Aを習得するという考え方自体には、ロシア女子は落ち着いた態度をとっています。それに、最初からそんなジャンプに挑戦するといったことはありません。長い期間、体力トレーニングをして、プロテクターを付けて、釣り竿で練習を重ねましたが、それでも恐ろしかったのです。あらゆる4回転への挑戦は、リスクです。しかし、現実が示しているとおり、リンクから上がるときでも、どこでもどんなふうにでも怪我はありえます。ですので、難しいジャンプを習得する際は、選手が疲れていたりなどして難しいエレメンツに入らないよう、常に集中し、すべてをコントロールしなければなりません。しかし、これはコーチの仕事ですが…。

いずれにせよ、女子の4回転はノルマになりつつあります。そして全選手が難しいジャンプを跳ぶよう努力するでしょう。


続く


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