羽生結弦の今シーズンのSP「Let me entertain you」について、Sport24に解説記事が掲載されていたので紹介します。
レザーパンツの羽生のロック・プログラム - 今シーズンの最高の振付。その本質に迫る
マリヤ・ルジツカヤ / Sport24 / 2021/4/13
シーズン中盤になってやっと2度のオリンピック王者である羽生結弦が自分のためにどんなプログラムを選んだのかが明らかになった。そしてフリーは彼の伝統的な嗜好に完全に沿っている一方で、ショートの選曲は観客を驚かせた。
ロビー・ウィリアムスのヒット曲「Let me entertain you」は、結弦が自分のショートプログラムに通常選ぶものにはまったく似ていない。オリンピックでの流れるようなショパンや、メロディアスなオトナルは、皆覚えているだろう。これらのプログラムを結弦が滑ったのは1シーズンだけではなく、これらとともに数多い世界記録を打ち立てた。ショートプログラムのクラシック・スタイルは、この日本選手の名刺となった。ただ、4年前も、結弦はアメリカの歌手であるプリンスのLet's Go Crazyを選んで観客を驚かせた。この選択は裏切らなかったと言わざるを得ず、ファンはプログラムだけでなく、かなり挑戦的な紫色の衣装にも恋をした。おそらくこのこともあり、羽生は、普通ではない曲に記憶に残る衣装で、自身にとって普通ではないナンバーをもう一つすることを決断したのだろう。
「私たちはジェフリー・バトルとショートプログラムについて話し合い、どんなものがみんなに好きになってもらえるかを考え出そうと努力しました。それで、このプログラムを思いついたのです。生の観客の前で、拍手や応援とともに演技できたらもっと良くなるはずだと。残念ながら、いまは皆さんはフィギュアスケートをインターネットを通じて見ていますが、演技中はいずれにせよ観客のエネルギーすべてを感じています。
実際、最初はピアノの曲にしようと考えていました。ピアノのメロディは良く解釈できると思っていますし、そうするのもすごく好きだからです。けれど、今滑っているロックは、心の深いところで感じていますし、自分の鼓動や呼吸がこの曲と一緒に存在しています。出来上がりつつあるものを楽しんでいます」と、羽生は世界選手権2021の記者会見で述べた。
このウィリアムスのヒットはロシア語の翻訳で「お前を楽しませてくれ」となり、したがって、結弦はプログラム全体で観客を惹き付けてばかりである。ロックスター・羽生結弦は、スタートポーズから自信のあるちょっと尊大な視線であり、選んだ曲に合っている。プログラムに固定のシナリオはなく、その全体が観客とのやりとりを予定している。ジェフリー・バトルは動画通信でプログラムを振り付けたにもかかわらず、その結果は極めて質の高いものに仕上がった。
音楽のアクセントはすべて、ロッカーの特徴的な「雄ヤギ」のような突き上げや人差し指で上を指すポーズ、ロックスター・スタイルのランジ、ジャンプの着氷で強調されている。ファンはプログラムのさまざまな切り札に歓喜した。例えば、「shake your arse come over here」という詞に合わせた特徴的な腰の動きや、最後のスピンでの普通じゃない激しい腕の振りで。プログラムはすべてエネルギーが貫かれており、それがクライマックスのステップシークエンスに流れ込んでいる。すでに技術的エレメンツをすべてやり終えた結弦は、完全に自分を解放し、野獣のようなスピードにまで加速し本当の意味で観客席を燃え上がらせ、両腕を大きく広げ両膝立ちでプログラムを終える。
このプログラムの性質を、衣装も強くしている。輝く黒のパンツ(おそらくエナメル革)、大部分が襟にある、結弦にしてはかなり少ない量のラインストーンの付いた、袖を短くした黒のジャケット、そして革のグロベレット(指なし手袋)。衣装は、羽生がプログラムで演じているロックシンガーのイメージを完成させていて、ファンの歓喜の対象となった。結弦が4年前の演技で来ていた紫のパンツにはさまざまな反応があった一方で、輝く黒でほぼぴったり張っているパンツは、ほぼすべての人が満足している。
自身にとって特徴的ではない曲による羽生の実験は、2017年と同様、成功したと勇気を持って言える。選手自身もプログラムを滑りながら楽しんでおり、観客も毎回の演技ごとに完全な歓喜の中に留まっている。
羽生のショートプログラムにおける曲の実験はすべてプレオリンピックシーズンに振り付けられていることに注目する価値がある。Let me entertain youからのエネルギー充填が、前回のオリンピック前にLet's go crazyでも起きたように、結弦にとってオリンピックに向けて充分となると信じたい。
(終わり)
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