ちょっと前の5月の記事ですが、羽生に関するロシアの紹介記事がありましたので前後編で紹介します。
地球外出身の日本人、羽生結弦はいかに世界を魅了したか
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7/29発売 フィギュアスケートLife Extra「Professionals フィギュアスケートを支える人々」 (扶桑社ムック)
アナスタシヤ・パニナ / match tv / 2020/5/26
不開催となったモントリオール世界選手権の男子でも一番の関心は、2度のオリンピック王者である羽生結弦が、待望のクワドアクセルを「着陸する」かどうかであった。「着陸する」という言葉自体、フィギュアスケートの文脈ではちょっと変な響きがする。言葉の意味としては、たぶんロケットの実験により近いからである。しかし、フィギュアスケートは、ジャンプが難しくなるにつれ、またギネスブックの新しいページに書き込まれるにつれ、ますます宇宙へと近づきつつある。
この宇宙開発において、多大な功績を残しているのがまさに羽生結弦である。「Match TV」は、フィギュアスケートのテレビ視聴率を新たなレベルへと上げ、何百万人もの人を魅了しただけでなく、自分のあとについて世界中を回らせることを強制した、この他にはないフィギュアスケーターの現象について述べる。
羽生結弦は日本の男子シングルが地球では最強であると観客に学ばせたので、いまではずっとそうだったのではないかと私たちには思えてしまう。しかし実際は羽生からすべてが始まったのだ。羽生のソチ2014と平昌2018での勝利まで、日本の男子シングルにはオリンピック金メダルはなかった。
これだけ群衆に崇拝され、大会ではカメラの照準がずっと合っているにもかかわらず、羽生はおそらく現代で最も隠されたフィギュアスケーターのままである。家族や趣味、フィギュアスケート以外の将来の計画に関する情報を少しでも見つけるよりも、彼が何度世界記録を更新したか数えるほうが簡単である。彼はツイッターもインスタグラムをしておらず、セルフィーを載せることもなく、フォロワーに対しライブ配信をすることもない。こういったことすべてが羽生のまわりに神秘的秘密の後光を形成し、地球外出身だという敬意をこめた多くのジョークが生まれる理由となっている。人類は、自分の知性の範囲内に置くことのできないものに対し、幻想的な説明を見つけることを常に指向してきているのだから。
一方、羽生結弦はショートで100点、フリーで200点、合計で300点を超えた最初のフィギュアスケーターとなったことを、知性は思い出させてくれる。羽生は史上初めてクワドループ、そしてクワドトウループとトリプルアクセルのシークエンスを跳んだ選手である。2018年のモスクワでのグランプリ大会表彰台には杖をついて上った。フリー前に怪我をしていたのに、日本から来た数千のファンに対する責任を感じ、大会を棄権をしなかった。
それぞれのプログラムにおける羽生の化身を見ては驚くばかりである。羽生には、定期的に同じプログラムを2シーズン滑るという欠点もあるが、選手生活10年の中でそれでも多くの面から自身を見せることができた。ゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」のブルースでは、性的で孤高の男を演じるのと同じシーズンに、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」では激情の恋人であった。普通じゃない解放された羽生を見たいなら、ライラック色のパンツとベストのプリンスをどうぞ。本当の日本を知りたいなら、カルト的プログラムの「セイメイ」を。
「セイメイ」は羽生結弦にとってあまりに成功したイメージだったので、2回もこのプログラムを戻している。プレミアは2016/2017シーズンだったが、平昌オリンピックのために2年残され、さらにその後最新のフリーである「オリジン」の代わりに戻している。おろらく「セイメイ」は、羽生の新たな大勝利のための祝福するための櫓として準備されたのだろう。モントリオール世界選手権でクワドアクセルを最終的に遂行することに近いところにあった。
クワドアクセルは、まったく別次元の話である。結弦は少なくとも2015年から近づこうと努力しており、その間練習でさえ1度もクリーンに見せたことはない。なぜそんあに難しいのだろうか?なぜなら、アクセルはその技術的特性から、回転数が整数ではない唯一のジャンプだからである。事実上、クワドアクセルは4回転ジャンプよりもはるかに5回転ジャンプに近い。選手には限界を超えた跳躍力と締めを求めるもので、羽生の4.5回転アクセル挑戦の失敗は、家の2階からの落下を思い起こさせる。
(続く)
地球外出身の日本人、羽生結弦はいかに世界を魅了したか
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(後)ファンと武士道
7/29発売 フィギュアスケートLife Extra「Professionals フィギュアスケートを支える人々」 (扶桑社ムック)
地球外出身の日本人、羽生結弦はいかに世界を魅了したか
https://matchtv.ru/figure-skating/matchtvnews_NI1193477_Japonec_vnezemnogo_proiskhozhdenija_Chem_pokoril_mir_Judzuru_Khanuアナスタシヤ・パニナ / match tv / 2020/5/26
子供の顔と侍の心
不開催となったモントリオール世界選手権の男子でも一番の関心は、2度のオリンピック王者である羽生結弦が、待望のクワドアクセルを「着陸する」かどうかであった。「着陸する」という言葉自体、フィギュアスケートの文脈ではちょっと変な響きがする。言葉の意味としては、たぶんロケットの実験により近いからである。しかし、フィギュアスケートは、ジャンプが難しくなるにつれ、またギネスブックの新しいページに書き込まれるにつれ、ますます宇宙へと近づきつつある。
この宇宙開発において、多大な功績を残しているのがまさに羽生結弦である。「Match TV」は、フィギュアスケートのテレビ視聴率を新たなレベルへと上げ、何百万人もの人を魅了しただけでなく、自分のあとについて世界中を回らせることを強制した、この他にはないフィギュアスケーターの現象について述べる。
羽生結弦は日本の男子シングルが地球では最強であると観客に学ばせたので、いまではずっとそうだったのではないかと私たちには思えてしまう。しかし実際は羽生からすべてが始まったのだ。羽生のソチ2014と平昌2018での勝利まで、日本の男子シングルにはオリンピック金メダルはなかった。
これだけ群衆に崇拝され、大会ではカメラの照準がずっと合っているにもかかわらず、羽生はおそらく現代で最も隠されたフィギュアスケーターのままである。家族や趣味、フィギュアスケート以外の将来の計画に関する情報を少しでも見つけるよりも、彼が何度世界記録を更新したか数えるほうが簡単である。彼はツイッターもインスタグラムをしておらず、セルフィーを載せることもなく、フォロワーに対しライブ配信をすることもない。こういったことすべてが羽生のまわりに神秘的秘密の後光を形成し、地球外出身だという敬意をこめた多くのジョークが生まれる理由となっている。人類は、自分の知性の範囲内に置くことのできないものに対し、幻想的な説明を見つけることを常に指向してきているのだから。
一方、羽生結弦はショートで100点、フリーで200点、合計で300点を超えた最初のフィギュアスケーターとなったことを、知性は思い出させてくれる。羽生は史上初めてクワドループ、そしてクワドトウループとトリプルアクセルのシークエンスを跳んだ選手である。2018年のモスクワでのグランプリ大会表彰台には杖をついて上った。フリー前に怪我をしていたのに、日本から来た数千のファンに対する責任を感じ、大会を棄権をしなかった。
それぞれのプログラムにおける羽生の化身を見ては驚くばかりである。羽生には、定期的に同じプログラムを2シーズン滑るという欠点もあるが、選手生活10年の中でそれでも多くの面から自身を見せることができた。ゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」のブルースでは、性的で孤高の男を演じるのと同じシーズンに、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」では激情の恋人であった。普通じゃない解放された羽生を見たいなら、ライラック色のパンツとベストのプリンスをどうぞ。本当の日本を知りたいなら、カルト的プログラムの「セイメイ」を。
「セイメイ」は羽生結弦にとってあまりに成功したイメージだったので、2回もこのプログラムを戻している。プレミアは2016/2017シーズンだったが、平昌オリンピックのために2年残され、さらにその後最新のフリーである「オリジン」の代わりに戻している。おろらく「セイメイ」は、羽生の新たな大勝利のための祝福するための櫓として準備されたのだろう。モントリオール世界選手権でクワドアクセルを最終的に遂行することに近いところにあった。
クワドアクセルは、まったく別次元の話である。結弦は少なくとも2015年から近づこうと努力しており、その間練習でさえ1度もクリーンに見せたことはない。なぜそんあに難しいのだろうか?なぜなら、アクセルはその技術的特性から、回転数が整数ではない唯一のジャンプだからである。事実上、クワドアクセルは4回転ジャンプよりもはるかに5回転ジャンプに近い。選手には限界を超えた跳躍力と締めを求めるもので、羽生の4.5回転アクセル挑戦の失敗は、家の2階からの落下を思い起こさせる。
(続く)
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