なぜ宇野昌磨はトゥトベリゼのもとで耐えられなかったのか? - セルゲイ・ドブリンが語る(前)ロシアの練習システム

2020年10月31日土曜日

トゥトベリゼ ドブリン

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2000年代中盤に活躍し、いまはクラスノダールでコーチ・トレーナーをしているセルゲイ・ドブリンが、ロシアでの指導システムについて一問一答で説明しているインタビューがありましたので、前後編で紹介します。今回の前編は、ロシアでの練習システムです。

掲示板を見るとロシア人の中でも賛否両論のインタビューですので、こういう意見のコーチもいるということでご理解ください。
 

なぜ宇野昌磨はトゥトベリゼのもとで耐えられなかったのか? - セルゲイ・ドブリンが語る

11/4発売 鈴木明子監修・選曲 フィギュアスケート・ミュージック ベスト~KISS&CRY

メドヴェデワやザギトワは男子よりも多く練習しているのは本当か?成長期にどうやってジャンプを維持するのか?なぜ宇野昌磨はトゥトベリゼのもとで耐えられなかったのか? - セルゲイ・ドブリンが語る

マリヤ・セレンコワ / Sport.ru / 2020/10/22


フィギュアスケートは、芸術への近さや目に見える軽やかさにもかかわらず、超インテンシブなスポーツである。フリープログラムは4分だが、ジャンプ、スピン、ステップ、腕の動きとともに高速で行う(これも評価に影響する)。そしてもちろん、疲れを見せてはいけない。

いったいどうやってそれを作り上げるのか。

身体トレーニング・コーチであるセルゲイ・ドブリンは、エフゲニー・プルシェンコがまだオリンピック王者となる前の時代にスケートを始めた。アレクセイ・ミーシン、ヴィクトリヤ・ヴォルチコワ、ジャンナ・グロモワのもとで練習し、23歳で引退し指導を始めた。

ドブリンは炭鉱の町プロコピエフスクやエテリ・トゥトベリゼのチームでも仕事をしていたが、現在はクラスノダールで指導をしている。Sport.ruはセルゲイに、フィギュアスケートにおける身体トレーニング、女子の4回転、そしてなぜロシアでの練習は、米国や日本よりも効率的なのかを尋ねた。


なぜフィギュアスケーターは氷上にそんなに長くいられるのか。ホッケー選手は通常30-40秒で交替する。


それは練習の成果です。すぐに大会に出てやるなんてことはありません。すべて、簡単なエレメンツ、スケーティング、スピンから習得を始めます。それが技術的な進歩となり、それから最初のエレメント、2つ目のエレメントと、部分ごとにまとめていくのです。

プログラムの振付では、まず前半を練習し、その後後半を滑り込んでいきます。その後、「設計図」という、ジャンプなしの通しの演技をして、それから2-3の難しいジャンプを入れて、楽めなコンテンツで全体を滑ります。

選手に怪我がある場合は別のやり方があります。例えば、アレクサンドル・サマリンはロシアカップ第2戦で4回転なしで滑りました。そうやって彼は身体に負担をかけないよう演技を軽くしたのです。体調が良くなったら4回転を入れるでしょう。フィギュアスケートには6種類のジャンプがあって、選手はみなそれを習得しようと努力しています。

4分間演技をするのは問題ありません。エレメンツは徐々に行っていくものだからです。

ソ連時代や、ソ連崩壊直後は、プログラム全体を通しで滑るということは私達にとっては意味が大きな出来事でした。部分ごとにだけ練習して、週末にフリーのテスト演技をしていました。そういった練習が、プログラムを滑り込む量が多ければ多いほど結果が良くなるということがわかるまで、とても長い間続きました。アメリカでは逆に、練習でプログラム全体をよく滑っていました。

いまは、ロシアでは、例えば午前中にショートを2回滑り、夕方にフリーを滑る、ということをしています。そして毎回のセッションで通し演技をします。トップ選手はもう4回転すべてを入れて出来上がったプロを滑ります。エテリ・トゥトベリゼは100%そうしていると思います。

夕方の練習では6分間練習があり、くじ引きをして大会の雰囲気を作り出します。順番に全員がプログラムを滑ります。待っている間は靴を脱ぐこともできますし、準備をして、それからリンクに入って30秒間慣らしてから、大会と同じように演技をします。それからコーチとともに間違った点を研究します。


フィギュアスケーターはオフアイスでどのような練習をするのか。


1.基礎体力トレーニング。例えば週に2回など、システマティックに行います。基礎体力トレーニングには、腹筋、背筋、脚のトレから、瞬発力トレまですべてが入っています。

2.1日の氷上練習後のクールダウン。選手はエアロバイクを漕ぐか、単にコースを走ります。例えば体重を落とすために他の課題をこなすこともあります。しかし、クールダウンは、氷上練習後のストレッチと同様に幼い頃から覚えなければならないものです。週末には、選手は通常クロカンランニングをします。

3.ジャンプのための練習。これはウォームアップで、その後氷上練習を行うものです。これはより技術的なものです。またスピンのためにはストレッチが重要で、例えば、必ずしもみんなが脚を180度開脚できるわけではないですから、選手にとってスピンでレベル4を取るためにストレッチは必要不可欠です。


スピンは、良い前提系とコーディネーションが必要なエレメンツ。これだけ回るのに選手はなぜプログラムを続けられるのか。


飛行機で跳ぶのと同じで、飛行時間数が多ければ多いほど、自信が持てるようになります。スピンも同じです。回転時間数が多ければ多いほど、うまくなります。

それほど複雑なことではありません。ただできるだけ多くエレメントを練習する必要があるだけです。フィギュアスケーターがスピンの後もプログラムを滑りきれるのは、練習の問題です。スピンを最後にすることが多いですが、ボーナスを得るためにジャンプをすべて後半に跳ぶ時代があり、その頃はステップやスピンをすべてプログラムの最初にしなくてはいけませんでした。あまり美しく見えませんでしたが、その頃はみな通し練習を繰り返すことで、滑りきれていました。


プログラム後半のジャンプ・ボーナスはなぜ廃止されたのか。バランスの問題だけか。


外国人はそういったプログラムを滑りきれなかったので、物理的にチャンスを平等にするためにされたものです。フリーですべてのエレメンツを後半に置くことのできた選手は多くありませんでした。とはいえ、なによりもまず、こういったプログラムはあまり良く見えませんでした。選手は最初にスピンをして、その後スケーティグをして、それから休みなしでジャンプを跳びに行くのです。これはもちろんバランスがよくありません。

もう一つの問題は、音楽です。フリーの振付は、最初にミドルテンポ、その後、休憩できるようにステップのためのスローテンポがあり、最後に記憶に残るような力強いラストとなります。

あの頃は、エレメンツが次から次へとくるように曲を構成せざるを得ませんでした。その場合、ジャンプの間は複雑なステップを特に詰め込むこともできません。物理的にとても大変なことなので、誰にでもできることではなく、すべては練習プロセスにかかっています。

例えば、アメリカでは学校を休むことを誰もしません。選手はリンクに来て、氷上練習を2セッション連続で行います。ロシアでは、フィギュアスケーターにとって学校の優先順位は2位でさえもなく、どこか3位あたりにあります。そして、練習プロセスも違っています。午前の練習があり、2回目は夕方で、その間は休みです。こういった、2ブロック構成の練習プロセスは、回復のための時間がより多くとれるので、2セッション連続よりも結果が出るものです。そのため、ロシアの子供たちは、外国人よりも楽です。


続く



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