ヴォロノフ:自分のためというよりも、デニス・テンの記憶のために滑っている(6・終)滑ることと今後の夢

2019年4月11日木曜日

2018/19 ヴォロノフ ピトケーエフ プルシェンコ 男子

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「自分のためというよりも、デニス・テンの記憶のために滑っている」セルゲイ・ヴォロノフ、ロングインタビュー

アナスタシヤ・パニナ / 2019/4/3 / Match TV



4/16発売 ワールド・フィギュアスケート 85

続き


(フィギュアスケートの関係するどんな分野があなたにとっては近いものなのでしょうか。指導やショー、運営など。もしかすると、リンクの支配人になりたいとか。)

(笑)みんな普通は支配人や会長、上司になりたいでしょう。だいたい権限とお金のためだと思いますが。

真面目に言うと、リンクの支配人は責任ある仕事です。メカニズム全体を設定しなければなりません。チームの選別をしたり、多くのことを自分で理解している必要があります。地方自治体と交渉したり、イベントについて合意をしたり。経営の資質を持っている必要があります。街を歩いていていきなりリンクの支配人になれるわけではありません。

ショーですべるのはいつでも興味深いです。最近、イリヤ・アヴェルブフのショーに出演しました。観客や雰囲気は心地よいものです。しかし、競技会アドレナリンを与えてくれるもので、何物にも代えがたいのです。ショーでも、観客を感じ、観客とエネルギーをやりとりして、ポジティブな気持ちをもらえます。一方、競技会は…何か、麻薬のようなものです。


(あるフィギュアスケーターが言っていたのですが、アスリートはアドレナリン中毒と言えるそうです。自発的に身体にひどい負荷をかけ、さらに真剣な競技会ではいつもそうだと思いますが、精神的に重いストレスをかけるような、普通の人は想像できません。)

まったくそのとおりです。競技会では、心理学的視点から言うとトランス状態になります。普通の生活では、落ち着いていたり、リラックスしていたり、真面目だったり、どんな状態でもありえますが、正気ではあります。一方、競技会では境界領域に入り込みます。演技中の氷上にいる3ー4分間の自分には、キスアンドクライにいてもなれません。そこではまったく違ったホルモンが働き始めるのです。

その境界領域にいることはどんな感じ感じなのか。わかりませんが、おそらく宇宙旅行とか、巨大なボーイング機を機長として操縦するとか、戦闘機の職業パイロットでしょうか。常にリスクがある状態と関連する何かです。

スケートを引退してから、それを何で埋め合わせられるのかについて、ちょっとした恐怖感と物思いをしつつ、いろいろと考えています。ロッククライミングとか、パラシュート?そうかもしれません。しかし、いずれによ、大会のようなホルモンと自分の感覚の組み合わせを与えてくれるようなものを、麻薬中毒者のように常に探し続けるのです。

これをそのままにしておいて埋め合わせるものを見つけようとしなければ、イライラしたり、すぐに激昂したりするようになってしまいます。


(面白いですね。普通の人は逆に、痛みやストレス、不都合なものから避けようとします。アスリートは、常に健康や精神に対して極端な条件を自分に対して創り出しているのですね。)

…そしてそういった条件を乗り切れれば、それが一番大きな報いなのです。メダルや報奨金は、結果に過ぎません。自分がしたこと、打ち勝ったこと、できたことからの満足感がまさに一番なのです。


(これまでにスポーツで、その意志や不屈さ、辛さを受け付けないことで、特に驚かされた方は誰かいますか?)

そういった例はたくさんあります。ただただ脱帽するばかりの。こういった道のりを歩み切るためには、どんな忍耐や、自分や新しいパートナーやチームを信じ切ることがなければならなかったのか。

頑健さの例ではまったくない、エフゲニー・プルシェンコ。エレーナ・イシンバエワ。ウサイン・ボルト。それから、クリスチアーノ・ロナウド。どれだけこのポルトガル人が目立っていようが、それ以前に彼はまるで呪われているかのように練習で基礎を耕しているのです。世界の大富豪番付でロナウドは何位なんでしょうか?もう前から彼は何もしなくても良かったはずですし、すべてを手にしています。しかし、彼はただ形式的に現役でいるだけでなく、根を詰めてプレイしています。

今日すでに何度も触れたあるコーチが、「溺れた分だけ食べられる」と言っていました。笑えるフレーズですが、競技の実際を反映しています。


(どんなプログラムの思い出が心をよく打ちますか?)

その数は多く、選ぶのは難しいです。どのプログラムも、シーズン全体を一緒に過ごし、その後で手放すものです。おそらく、一番鮮明ですが、重いものは、今シーズンのフリーでしょう。それ自体ということではなく、その背後にある悲劇という意味で。


(私なら、特にMuseのExogenesisを選びたいです。)

アジヤン・ピトケーエフというフィギュアスケーターがいました。アレクサンドル・ジューリンがこの音楽で彼に振付をしました。聴いたとき、ただその音楽が自分を分子へと分解するのがわかりました。滑ってみたい、と強く思いました。音楽で自分に翼が生えてくるのは、とてもクールな感覚です。Museはそうでした。

だいたい音楽は人類が考え出した最も偉大なものの一つですが、私にとっては特別な意味を持っています。できる限り、静けさの中では滑りません。


(バンクーバー・オリンピック前の時代、まだペテルブルクで滑られていたころですが、カナダは練習と生活のための理想的な場所だと思えるとお話しでした。いまも同じようにお答えになりますか?)

(笑)いいえ、もちろん。その頃は20歳を過ぎたばかりで、スターバックスからライフスタイルまで、ただ北米のものが全部好きだったんです。

カナダは素晴らしい国で、滞在するのは心地よいですし、2ヶ月ばかり住んでみるのも素晴らしいでしょう。しかし、私はモスクワの方が良いです。この落ち着きのないカオス、たくさんの人の群れ、すべてが。いまのモスクワでの練習条件は素晴らしいですし、ペテルブルクもそのようです。バンクーバーも、トロントも好きですが、自分の国に住みたいと思っています。それに、国際舞台でロシアを代表する名誉を賜っていることを誇りに思っています。ロシアはスポーツの偉大な伝統を持っている国ですから。


(いまは何を夢みていますか?)

(考えた後)スケートのことを言うのはつまらないでしょう。15歳だったら、オリンピックの金メダリストになりたいと言ったとおもいます。しかし、自分の競技場の希望は、いまは自分の中に留めておきます。

人生についていえば、今していることや今の生活がとても気に入っているので、これ以上のものは夢見ていません。とはいえ、最近はバイクの乗り方を学びたいという強い希望が出てきました。親しい人たちはみな完全に反対ですが、乗りたいんです!もしかうると、競技会にだいぶ出ていないので、強い感覚が足りていないからかもしれません。それから、爆撃機に乗って飛んでみたいのです。リスクもあり実現不可能ですが、できれば良いなと。

(終わり)

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